〜ダイアリー・オヴ・A&R〜

(レーベルマンさん著)

〜ダイアリー・オヴ・A&R〜
2004年 初春、第2期コブクロが始まる。。。

それはストリートから。生々しい産声と共に2人が歩き出した瞬間から。

自問自答、紆余曲折、原点回帰、そして進化。

2人の“男性”は自らの手で扉をこじ開ける。


十二月三十日 大阪城ホール二日目。たった今、満身創痍で挑んだツアーファイナルのパフォーマンスを終えた二人は、マネージャーM氏からタオルを受け取った後すぐには楽屋に入らずステージと入り口を繋ぐ薄暗い通路で、バックバンドの面々、裏方の職人達と握手や抱擁を交わしていた。
メンバーはそれぞれ、達成感と疲労困憊、様々な想いが感覚となり若い“生身”に染み込んでいっているのだろう。狩猟に疲れ人知れず浜辺までたどり着いたシャチのように、まどろんでいる黒田。生の声・言葉をなんとかカメラに収めようと試みたが、既に大阪城ホールの内側では、活気を取り戻した若いスタッフによって機材・舞台装置が搬出されて行き、とてもカメラのマイクでは収録出来る状態では無くなっていた。その間に隣の楽屋ではマスコミ関係者がメンバーとの対面を待っており、レコード会社のスタッフが間を持たせる為に会話の相手をしていた。


一通り、楽屋を訪れた人々とセイハローのセレモニーを終え、身支度にとりかかったメンバー、マネージャーM氏にワーナーミュージックの大阪オフィスで黒田1人の単独インタビューを撮影する事を告げると快く承諾してくれたので、カメラクルーらとともにタクシーでワーナー大阪に直行する。


3月24日に発売されるDVDの為に残している映像は、前任ディレクターMJ氏の代からシューティングして撮りためている2002・大阪城、2003春・渋谷公会堂のLIVEがある。その他にレコーディング風景、笹路プロデューサー、バンドメンバー、舞台監督のコメントetc… そしてメンバーのオフ映像など、ファンにとってこれ以上満足できる映像は今のところないだろう。後は今夜の大阪城ホールの映像をメインに、今まであまりなかった小渕健太郎と黒田俊介を個別にインタビューした映像が欲しかった。そして、今からその映像を撮ろうとしているのだ。小渕のインタビューは12月29日大阪城初日の開演直前にすでに収録していた。メジャーから今日まで、・アーティストコブクロ、・それぞれが小渕・黒田についてなど、数分間のインタビューだ。3年間彼らと触れ合ってきたが、2003年の10月1日付で彼らのA&Rになってからの3ヶ月だけで、新しい発見がたくさんあった。デビューから2年間は、大阪のスタッフとして携わったが、その間に大阪で一緒に過ごしたり、メンバー、M氏と4人でよく地方を旅して、レコード会社に入ってからこれだけ1つのアーティストと過ごした経験はなかった。だからこそお互いを熟知していたように錯覚していたが、この3ヶ月間で彼らの未知の部分に触れた量は当時のそれを軽く上まわってしまった。この個別インタビューをDVDのドキュメントサイドであるディスク2に挿入する予定なので、私が感じている雰囲気が上手く伝わると思う。


大阪オフィスに到着した一行とともに無人のオフィスビルのエレベーターを上がっていると当時の事が懐かしく甦ってきた。カメラクルーによりテキパキとインタビューの場所、アングルが決まり、セッティングが終わった。私の問いかけに丁寧に言葉を選びながら答える黒田はその部屋に小渕がいないのも手伝ってか真剣な表情で話し、テレビやラジオで時折見せるコミカルな空気が一部も無く、質問する側も真剣になる。


数分間のインタビューが終わり、ディスク2の選曲の締め切りが年明け2日に迫っている事もあって、打ち上げ会場で待っている関係者も気になるが、基本的な候補曲だけでも絞る事を提案する。今回、ディスク1に2003年大阪城の全楽曲をすべて収録する事もあり、ディスク2のドキュメントサイドに収録する楽曲とかぶらない選曲をする事になっていたが、年末から黒田が、春の渋公での「YELL」の出来が非常に良く、収録してはどうかと提案をしてくれていたので、数分間のやりとりの結果今日の「YELL」を見て判断する事になった。


一緒に来ていた映像ディレクターがステージ両サイドに映し出されたビジョンのLIVE映像に、DVD用に高度な技術によってミックスされた音声を収録したVHSを持って来てくれていた。この音声はメジャーデビューから発表されたコブクロのすべての楽曲のレコーディングにエンジニアとして携わっていたS氏が大阪城ホールの外に配置されたレコーティング機材車に陣取り収録をしてくれていた。彼は笹路プロデューサーの秘蔵っ子である。


VHSを「YELL」まで早送りし部屋にいる小渕、黒田、カメラクルーが息を飲む中で再生ボタンを押しイントロが始まる。映像は会場に見せる為の構成のモノでDVD化されるクオリティとは違うが、それでも美しく、何よりもS氏によって収録されたバンドサウンドとヴォーカリストの声に会議室の空気が澄んだような錯覚さえおぼえた。エンディングにさしかかった時、終わるのを待つのももどかしそうに小渕が拍手をし皆が後にならった。これが後日、S氏によってトラックダウンされ更に磨きがかかったサウンドになってDVDに収められるのだ。黒田が満足そうにうなづいた。これで、決まりである。


ディスク1、ディスク2の収録曲はかぶらずに選曲する事になるので30曲近く入る。時間にして4時間を超える超大作だ。ディスク1の大阪城もトーク部分はともかく楽曲部分はすべて収録する。ディスク2にはファン待望のエンドロールが15分以上入るだろう。エントリーは既に1万人を超えている。

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